再生歯内療法ついて
再生歯内療法とは何でしょうか?
歯の根が未完成な状態で、歯髄(歯の神経)が死んでしまった場合、それ以上の歯根の成長は見込めなくなります。再生歯内療法は2001年に報告されたケースレポートが元になり盛んに研究されるようになっている治療法です。
行うことは基本的には歯の中の感染除去を行うという根管治療ですが、特殊な工程を加えることで本来なら成長が見込めない歯根の長さや幅の増加が期待できる治療法です。
また、理想的に治癒が起こると歯の中にニューロンや神経線維が入り込む事が報告されています。根管治療の後は、根の中を生体親和性の良い材料で充填を行う根管充填というステップで一段落しますが、歯科材料による根管充填ではなく、本来生体組織の持っている自然な創傷治癒の優位性がある治療法になります。
このような方は再生歯内療法が必要です。
再生歯内療法は、歯根が完成していない状態で歯髄が死んでしまった歯が適応になります。外傷を受けた前歯や、中心結節という形態異常をもつ小臼歯に多く適応になる場合があります。治療が必要になるタイミング的に、10代〜20代の方が適応になることが多いです。この治療法は非常に特殊で「とりあえず」根管治療が始められてしまうと、適応できなくなる可能性があります。
下顎右側第二小臼歯の咬合面に認められる、
中心結節が折れた痕跡
同部エックス線画像:根が未完成で開いており、
根尖部透過像を認める
このようなケースの時、適応になる場合があります。
再生歯内療法の治療方法について
歯の中の感染除去を行うのは根管治療と同じですが、根の先が完成していないことにより治療中の工夫によって根の外から歯の中にまた血の巡りを復活させようとする治療法です。
初回来院時
- 1. 根が未完成の状態で、歯髄が壊死してしまった歯
- 2. 感染根管治療に準じて、根管内の清掃を行う
- 3. 根管貼薬を行い、確実な仮封を行う
2回目の来院時
- 4. 貼薬剤を除去し、根管を十分に洗浄する
- 5. 清潔な器具で、根の先を刺激して根の外の組織から血液を歯根の中へ誘導する。その後MTAセメントで上部を封鎖しする。
その後の経過観察
症状の経過観察と、エックス線検査を3〜6ヶ月おきに継続し経過を見ていきます。
再生歯内療法を行うことによって考えられる改善について
症状と根尖病変
痛みや腫れなどの症状が改善し、エックス線的な根尖部透過像が改善するのが再生歯内療法の第一のゴールです。これは、通常の根管治療と変わらず、最低限の到達目標になります。
歯根歯質の厚みや長さの増大
第一のゴールを達成した後は、その後の歯根の長さや幅が増加していくかを観察します。それが達成されれば第二のゴールです。
生活歯髄反応の回復
第二のゴールが達成された後は、歯髄反応が復活するかも経過観察します。この反応が認められるまで数年の経過観察を必要とすることもあります。
再生歯内療法で大切なことは
何でしょうか?
再生歯内療法で大切なことは、根管内で起こっている現象への理解です。「根の中をキレイにしてMTAセメントを詰める」という、言葉では簡単に言える事を質高く実行するためには、十分な知識と繊細な技術が必要になります。
また私はこの治療法がまだ広く知れ渡る前の黎明期から研究、臨床を行ってきており関連する論文発表、学会発表や講演なども多く行ってきた経験があります。科学的根拠に裏付けされた知識と、高い技術であなたの歯が救えるかもしれません。
論文報告
- 失活した根未完成歯に対しRegenerative endodontic treatmentを行った症例
高林 正行, 増田 宜子
日本歯科保存学雑誌 59(2) 236-242 2016年
受賞
- 2021年 Doctorbook academy 第三回ケースレポートGP
歯内療法セッション 優秀発表賞
「再生的歯内治療を試みた症例」
書籍刊行物
- 患者と歯科医師を困らせない歯内治療 Vital Pulp Therapy、Regenerative Endodontic Treatmentの先を
考える
歯界展望 135(3) 433-449
2020年3月
講演
- Vital Pulp Therapy,Regenerative Endodontic Therapyの先を考える
第15回歯内療法症例検討会
2019年8月25日
- Elements of Modern Endodontics Part 2-根未完成歯に対するRegenerative Endodontic Treatment
第三回P&P研鑽会学術講演会総会
2017年7月30日
学会発表
- ・ 失活した根未完成歯に対しRegenerative Endodontic Treatmentを行った4症例
高林正行, 八幡祥生, 鈴木規元
日本歯科保存学会学術大会プログラムおよび講演抄録集(Web)
146th 148 (WEB ONLY)
2017年5月8日
- ・ 失活した根未完成歯に対しrevascularizationを行った症例
高林正行, 増田宜子, 細田秀剛, 宮本千明, 馬場聖, 宮崎隆
日本歯科保存学会学術大会プログラムおよび講演抄録集(Web)
142nd P91 (WEB ONLY)
2015年6月1日
- ・ Regenerative Endodonticsを
試みた4症例
高林正行, 増田宜子
日本再生歯科医学会学術大会および総会プログラム・抄録集 13th 57
2015年
- ・ 失活した根未完成歯に対しrevascularizationを行った症例
高林正行, 増田宜子, 山田嘉重, 宮崎隆
昭和学士会雑誌 74(6) 700
2014年12月28日
- ・ Regenerative Endodontic Treatment (Revascularization) of Necrotic Immature Permanent Teeth
TAKABAYASHI Masayuki, MASUDA Yoshiko, YAMADA Yoshishige, MIYAZAKI Takashi
Showa University Journal of Medical Sciences 26(4) 326-327
2014年12月
再生歯内療法の注意事項
再生歯内療法を試みても症状の改善を認めない場合は、通常の根管治療による治癒を期待することになります。また治療直後は腫れや痛みがすぐに引かない場合もあります。
治療後の反応によって、再生歯内療法が期待できない場合があるので、十分な検査や経過観察が必要です。